レリーフというのは、外国の硬貨の裏に刻印されている歴史上の人物の横顔のような浮き彫りのことです。千年写真は彫刻ではありますが、浮き彫りではありません。硬貨よりもむしろ紙幣のほうが近いでしょう。紙幣の肖像を彫刻化したようなもの、とお考えください。
石材の浮き彫りはエジプトやギリシアなど世界中で有史以前から製作されてきました。アンコール・ワットやペルセポリスといった世界遺産には、たくさんの浮き彫りの装飾がほどこされています。
写真を模した金属製のレリーフも近年広く販売されています。昔ながらの直彫りだったり、粘土に型どりして鋳造するブロンズ彫刻だったり、CADデータからのマシニングセンタによる3次元機械加工だったりとさまざまです。
それらは半立体ならではの肉盛り感に富んだ重厚な仕上がりです。特に熟練した職人により手作業で写真から起こされたレリーフには、人物の特徴を巧みにとらえた、完成度の高い製品があります。
ただ、近年の多くのレリーフは、専用のソフトウェアを用いて、金属の彫刻を成型するための半立体データを、写真から自動的に生成しているようです。その際、自動的なレリーフ生成工程では、写真の明暗の情報を奥行き(高さ)の情報に変換しています。明るさを奥行きというまったく別のパラメータに置き換える段階で、写真本来の階調が失われ、原型が改変されてしまうと思われます。
そういったレリーフは写真を元にしてはいるのですが、いずれも多少ともデフォルメされ、イラストのように単純化される傾向があるようです。作業者の腕にもよるでしょうし、けちをつけるつもりはないのですが、写真と比較してしまうと、顔の描写がどことなくマンガ風に見えがちな印象です。半立体とするために、髪などの細部を省略しなければならないということもあるでしょう。
そのようなレリーフ彫刻にも独特の味があり、記念の品として価値が高いと言えるでしょう。ただ、あくまで写真を元にした立体造形であり、写真を忠実に再現したい場合には向かないのではないでしょうか。
一方千年写真では、階調情報をそのまま明るさとして表しますので、写真の明暗が違和感なく再現されます。レリーフのように実際の盛り上がりはありませんが、レリーフとは別の特有の立体感があります。また、写真の雰囲気をそのまま表すことができ、自然な仕上がりとなります。